バンコク在住の会社員KJさんのタイ・サッカープレミアリーグの観戦レポートです。

今回はTPL(タイ・プレミアリーグ1)10位のシン・タールアFCと5位のラチャーブリFCの試合(2014年10月15日、第33節)です。
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シン・タールアはチャオプラヤー川下流のクローントォーイ地区にあるタイ・港湾局のクラブチームとして1967年に発足、現在TPL(タイ・プレミアリーグ)所属のチームとしてはエアフォースに次ぐ歴史を持ち、TPL発足以前にタイのチャンピオンを決めるコー・ロイヤルカップは、これもエアフォースに次ぐ優勝8回、タイFAカップ優勝一回、クィーンズカップ6回という実績を持つチームなのだが、最近は華々しいチームの活躍ではなく、サポーターの暴動などが取り上げられることが多い。
チームの代表はタイ警察中将のカムロンウィット・トォープクラジャン、監督としてタイサッカーにおけるレジェンドの1人、ドゥシット・チャレムセンが指揮を執っている。過去に在籍した日本人は丸山良明選手、森田浩史選手の2人、現在はバンコク・グラスから移籍した猿田浩得選手が2014年よりプレーしている。
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このチームが本拠地としているPATスタジアムはバンコクの中心部から最もアクセスしやすいクラブチームのスタジアムとして有名で日本人が多く住むスクンビット地区からタクシーで10分程度、最寄りの駅である地下鉄クィーン・シリキットセンターからは徒歩で10分とアクセスも良いので日本人も多く観戦に来る立地にある。

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ラチャーブリFCはタイ中西部にあるラチャーブリ県に本拠をおく、ブリーラム・ユナイテッド、ムアントン・ユナイテッドと並びタイサッカーの新興勢力として注目されているチームである。創立は2004年TPLのチームで比較的新しいチームであり2011年から突如力を付け始め、同年D2(タイ・ディビジョン2リーグ)優勝、2012年D1(タイ・ディビジョン1リーグ)優勝、この年はブリーラム・ユナイテッドから9人もの選手をレンタルで獲得してタイ・リーグカップで準優勝している。

オーナーはタナワット・ニティカンチャナという資産家の子息であり、実質のオーナーは試合後、選手と共にサポーターに挨拶に来る母親のようである。監督はスペイン人のリカルド・ロドリゲス、スタジアムはマスコットの名前を冠したドラゴンスタジアム(ラチャーブリスタジアム)を使用、今シーズンからは湘南ベルマーレなどでプレーした永里源気選手が加入、現在リーグ得点王で昨年までセレッソやベガルタでプレーしていたヘベルチと共に好調を維持して現在チームを5位にまで引き上げる活躍を見せている。
ちなみに表記ではラチャーブリとなっているがタイ人は「ラッブリー」と発音する。
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ラチャーブリのチームバス、龍がトレードマーク

試合は両チームとも日本人が先発し、タールアはオーソドックスな4-3-3、ラチャーブリは4バックでファビオ・ロペスが1トップ、トップ下には今期ここまで23得点と抜群の安定感を誇るヘベルチを配し、永里選手は右サイドのMFとして攻撃参加、立ち上がりからヘベルチが相手陣内のスペースに飛び込んでシュートを放つがゴールの枠を捉えることは出来ない。

一方タールアもホームサポーターの圧倒的な後押しを受けて2分には6番ワッチャラのシュートはゴール左に外れ、8分には10番レアンドロがゴール右に鋭いシュートを放つがこれはGKがかろうじて片手一本で防いだ。

10分には猿田選手がペナルティエリアすぐ外でボールを受けると後ろにいた6番ワッチャラにパスを出しそれをダイレクトで鋭いシュートを打つがクロスバーをかすめて左に切れていった。

15分にラチャーブリは決定的場面を迎える。ブリーラムやチョンブリでプレーしていた左サイドのMF38番フアン・ケロから出されたスルーパスにヘベルチがオフサイドギリギリのタイミングで飛び出しGKと1対1となるがシュートしたボールを
GKチャンチャイが身体を張って防ぎピンチをしのいだ。

前半を通じてラチャーブリはどの選手も動きがよく、最終ラインをやや上げリスクを負いながらも効果的に相手陣内に攻め込むという戦術で特に今季7ゴールの永里選手はスピードもあり、良いポジショニングをするのですが、決定機に絡むことができません。

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運動量が豊富でスピードもある永里源気選手

ここまで6本のシュートを放ち徐々に最終ラインが手薄になって行くラチャーブリだが、タールアがその隙をついた。
 
30分、センターライン付近から出されたボールに10番レアンドロがラチャーブリDFの2人ともつれ合いながらうまく左足の甲ですくうように蹴ったボールはきれいな弧を描きながらGKの右手をかすめてゴール右上に飛び込み1-0!攻められていたタールアが先制することとなった。

先手を取られたラチャーブリは攻撃の手を緩めず31分FKのチャンスにヘベルチが左足で蹴ったボールはクロスバーの上を越え、34分右サイドからのクロスをゴールエリア前に詰めていた永里選手が頭で合わせようとGKと競ったがこれはオフサイドの判定。

その後もラチャーブリペースで試合が進み42分、左サイドで38番フアン・ケロから立てに出されたボールにタイ人MF13番のヤイが走りこみゴール前にクロスボールを上げるとヘベルチが相手DFに激しくチャージされながらも高い打点でヘッドを叩きつけゴール!1-1の同点!
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日本でもプレーした経験があり、現在TPL得点王のヘベルチ


後半もタイムアップ間近の48分に右サイド35m付近から10番レアンドロのフリーキックはゴール左に位置していた24番セルビア人のプレドラグ・シキミッチがヘッドで折り返したところをゴール右サイドから走りこんだ猿田選手がシュートし、ゴールと思われたがなんとこれがオフサイドの判定。

猿田選手はオフサイドポジションにいなかったため、納得のいかないタールアの選手が審判に詰め寄るが24番シキミッチが折り返したボールにオフサイドポジションにいた40番のワルートがプレーに参加したと判断されたもので判定は覆らなかった。しかし、これはプレーに参加したのではなく後ろからラチャーブリDFに押された倒れたためそのような動きに見えたのであって、この判定は少々疑問が残った。

後半もやはりラチャーブリペースで進む、50分には38番フアン・ケロがゴール正面やや左からノーマークの状態から左足で鋭いシュート打ったがGK正面。

52分タールアはゴール45度の位置からFKを10番レアンドロがクロスバーギリギリに蹴るがGKのウキットが右手の先でコースを変えて防いだ。

61分、右サイドを何度も駆け上がり攻撃に参加していた14番永里選手を基点として25番シラがドリブルでフェイント掛けながらうまくDFを誘い、釣られたところをカットインしてかわし、速いグラウンダーのパスをゴール前のスペースに出すとそれに40番ファビオ・ロペスがスライディングで左足に当てて1-2!逆転のゴールとなる。

66分ここまで押し込まれていたタールアだったが、左サイドでパスを繋ぎながらサイドラインいっぱいに展開した猿田選手がゴール前にあげた大きなクロスに24番シキミッチが相手DFも届かない高さでヘッドを打つとGKの手の先をすり抜けてゴールに吸い込まれた。猿田選手のアシストにより2-2の同点となる

喜びを爆発させる監督のドゥシットとタールアサポーター、興奮はスタジアム全体を包み大きく揺れる。

後半も70分を過ぎた辺りから両チームとも30℃を越える暑さの中、徐々に体力を奪われ動きが鈍くなる。それでも、ここまで優位に試合を進めてきたラチャーブリはアウェイでの引き分けをよしとせず攻撃の手を緩めないがタールアも必死の守り見せリードは許さない。

このあたりでタイのチームにありがちな時間稼ぎはホームで勝ちたいタールアと順位を上げたいラチャーブリの事情からなりを潜め激しいプレーの連続となりお互い一歩も譲らないがそのままタイムアップ。

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2-2の引き分けでこの試合のMVPはヘベルチ、サイアム・スポーツの採点では1アシストの猿田選手は6点、永里選手も良い動きでチームをサポートし6点と十分合格点が与えられた。

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試合後のヘベルチ、日本語も少し話せる

この試合、白熱してなかなか見ごたえのある試合であり、タイのサッカーの悪い部分があまり見られず両チームのサポーターも満足したはずである。

しかし、すでに前回のコラムで書いたとおり、この次のムアントン戦で非常に残念な事件が起こってしまう。