バンコク在住の会社員KJさんのタイ・サッカープレミアリーグの観戦レポートです。

今回はTPL(タイ・プレミアリーグ1)9位のバンコクFC(BGFC)と19位のソンクラー・ユナイテッドの試合(2014年10月18日、第31節)です。
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ソンクラーユナイテッドは1999年にタイ南部のソンクラー県で創設されたソンクラーFCの流れを汲むチームで30000人以上の観客を集める人気チームであったが、2011年にTPL(タイ・プレミアリーグ)からD1(タイディビション1リーグ)に降格してしまう。
しかし、同年ブリーラム・ユナイテッドのオーナーであるネーウィン・チッドチョーブの妻であるカルナ・チッドチョーブが所有していたブリーラムFCが2011年にD1で優勝しTPL(タイ・プレミアリーグ)昇格をした際にその経営を買い取ることにより本拠地をブリーラムからソンクラーに移しウワチョン・ユナイテッドが誕生、2013年に当時D1のソンクラーFCと統合することによってソンクラーユナイテッドが誕生した。

メインスポンサーはタイの大手携帯販売会社i-mobile社とGSバッテリー、また象のマークでおなじみのチャーンビールなど。ホームスタジアムはティンスラーノン・スタジアムで収容人数は35,000人と、タイのクラブが使用するスタジアムとしては最大規模を誇る。

BGFCは8月以降のリーグ戦成績が3勝4敗3分、中断明け後は勝ちが無い状態ながら何とか7月以降9位のポジションを守り続けており、対するソンクラーは現在D1(タイ2部)への降格圏内というピンチにあり、なんとしても落とせない試合である。

ソンクラーのシステムは基本3バックの3-4-1-2、ツートップにはニュージーランドと日本人のハーフ(母親が日本人)で去年までインドでプレーし、今季ここまで9得点の11番ケイン・ヴィンセント選手と最近ソンクラーに加入してケインとポジションを争っている28番マズファー・エジュピのツートップでのエントリー、普段一緒にプレーして来なかった2人であるがこの日はこの采配が当たった。

BGFCは4-3-3、守備の要であるセンターバックにはもちろん茂庭選手、今期8ゴールの大久保選手も先発出場で同じく8得点の22番ダルコ・タセフスキ(マケドニア代表)、チームトップの9得点で11番ラザラス・カインビ(ナミビア代表)らとのトリオで攻撃陣を構成している。
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チーム力で比較すれば守備では失点がほぼ同じもののBGFCの攻撃力がソンクラーを完全に圧倒しており、BGFC有利の雰囲気があったのだが、この日の勝負は両チームの11番とGKが鍵を握っていた。

試合は開始直後に早くも動く、5分に中央の大久保選手が基点となり、22番ダルコからダイレクトでスルーパスを出すと、前線に飛び出した11番ラザラスが飛び出していたGKニヌルディンの頭上を越えるループを放つと美しい弧を描いてゴールに吸い込まれBGFCが1-0とリード。

前半立ち上がりからBGFCは早いパス廻しで攻めあがり、ソンクラーに付け入る隙を与えず立て続けにチャンスを掴んでいった。守備も茂庭選手がスペースを相手に与えず決定機を作らせない。前半途中までソンクラーは11番ケインがペナルティエリア外から左足でクロスバーに当てたのが唯一のものだった。


8分には右サイドに展開した11番ラザラスがゴール前にクロスを上げ、ファーサイドから走りこんだ大久保選手がヘッドで合わせるがワンステップ下がって打ったため加わらずDFがクリアする。絶好のチャンスだっただけに悔しがる大久保選手。
 
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18分、また大久保選手がチャンスを作る。22番ダルコからの長いパスに走りこみ、ペナルティライン左サイドで相手DFと競りながらボールを受けた大久保選手が11番ラザラズとすれ違いざまに出したボール出すとそれを受けたラザラズは右足で鋭いシュートを打つとボールはブロックしたGKニヌルディンに当たったものの勢いのあるボールはゴール右隅に決まり2-0とリードを広げる。

ソンクラーも何とか反撃をするべく前線の11番ケインと28番マズファーにロングボールを出すが、BGFCのディフェンス陣がうまく2人を追い込んでシュートするチャンスを与えない。

28分またしても大久保選手からチャンスが生まれる。ハーフウエイラインやや左で受けたボールをそのまますばやく11番ラザラスと交差するようにスルーパスを出すと一瞬対応の遅れたDFをかいくぐり、ピンチを察したGKニヌルディンが飛び出してきたところをフェイントでかわして完全にフリーになると左足で無人のゴールにシュートするが、それがポストに当たりノーゴール、ラザラズは決定的な場面で外してしまいハットトリックのチャンスを逃してしまう。
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サッカーでは2-0というのは危険なスコアだと言われる。そしてたった一つのプレーをきっかけに試合の流れが変わってしまう。この日のこのプレーで変わったとは思えないがここからそれまでの勢いが完全にソンクラーに傾いていく。

それまで、FWの2人を試すかのように毎試合交互に11番ケインと28番マズファーを先発や途中交代で使い、コンビをあまり組んだことのない二人が機能していなかったかのように見えたのだがいきなりその分析は覆されてしまう。

32分、左サイドのコーナー付近から逆サイドに出されたクロスが28番マズファーに渡る。すかさず3人で囲むBGFC、チャージされる前にマズファーがゴール前に出した中途半端なクロスは最終ラインの裏側にワンバウンドしてしまい、DFがうまくクリアできずそこに詰めてきた11番ケインが頭で押し込みゴール!これで2-1、これで追われるBGFCと勢いのついたソンクラーの立場が精神的に逆転してしまう。

40分にはまたソンクラーの助っ人コンビが魅せる。ペナルティライン付近に出されたボールを28番マズファーが胸でトラップしそれを右アウトサイドでトリッキーなパスにノーマークの11番ケインがノートラップで右足を振りぬくとボールは豪快にゴール右隅に突き刺ささり2-2の同点、ホームのBGFCファンから大きなため息があがり、50人に満たないソンクラーサポーターは狂気乱舞している。
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同点に追いつかれたBGFCだが前半ロスタイムに右サイドのDFウィタヤーがスルーパスに反応してボールを受けると中央の大久保選手に出し、それを右足でシュートするが、GKニヌルディンが見事な反応を見せこれをセーブする。そしてこの後このGKニヌルディンもMVP級の働きを見せるのである。

後半もBGFCは最終ラインを極端に上げて前がかりになりホームでの勝利を目指す。開始直後から猛攻を仕掛けるがGKのニヌルディンが50分BGFCのコーナーキックから茂庭選手のヘッドを止め、53分のミドルシュートをクロスバーギリギリで弾きゴールを阻止、そのプレーでのコーナーキックでは直接ゴールを狙うがニヌルディンかろうじてパンチングで弾いたボールを茂庭選手がフリーで蹴るが慌てて打ち上げてしまい、膝をついて頭を抱える。

さらに57分、タイ人でMFのバディン(Bordin Phala)がゴール前での素早いパス交換でキーパーと1対1になりシュートをするがまたしてもGKニヌルディンがこれを右手に当てて弾き、それを味方DFがクリアしてノーゴール。たった10分の間に3度のピンチを救った。

65分、ここまで防戦一方だったソンクラーだが、BGFCの隙をついてボールを奪い、ハーフウエイラインから右サイドを走る11番ケインに長いグラウンダーのパスを出したところ茂庭選手と競争になるが、スピードを上げてボールを奪いゴール前の28番に折り返えしあとは右足で合わせるだけという最高のパスをマズファーが決め、ついに2-3と逆転に成功!ボールにキスを繰り返し喜ぶマズファー。対人能力が高く、スピードもある茂庭選手に勝ったこのプレーでケイン・ヴィンセントは高さやパワーに加え、スピードもあるところを見せた。
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ボール支配率で圧倒しているBGFCだがどうしてもチャンスを生かしきれない。それでもホームサポーターの声援を受けて攻め続ける。

78分、ゴール前の混戦からこの日2得点の11番ラザラスにボールが渡りそのままキーパーと1対1になり、フリーで左足のシュートを放ち決まったと思われたがそのシュートをGKニヌルディンがなんと片手で叩き落として防いでしまう。もはや神がかり的なセーブである。

結局、この日の試合はBGFCのペースで進んだかのように見えたが、ソンクラーに何かが取り付いたような試合運びで2-3の勝利、この日の主役は両チームの11番(ラザラスとケイン)に加え、ケインと抜群の連携で勝利に貢献した28番のマズファーのプレー、さらにGKニヌルディンによる多くのスーパーセーブと見ごたえのあるプレーが多い試合であった。

サイアムスポーツの採点によるとソンクラー・ユナイテッドは2得点1アシストのケインが8点でMVP、1得点2アシストのマズファーは7点、バンコクグラス茂庭選手6点、ラザラス7.5点、大久保選手は2得点に絡んだが6点とかなり低い評価がされた。

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ケイン・ヴィンセント選手 試合後、スタジアムの外で気さくに応じて頂きました。

最後に、この記事がアップされた時点ですでに発表されていると思うがケイン・ヴィンセントが来季から今年のTPL(タイ・プレミアリーグ)のチャンピオンであるブリーラム・ユナイテッドでプレーすることとなった。ブリーラムは来期のACL(アジア・チャンピオンズリーグ)本戦出場を決めているため、来年は日本に凱旋してJのチームと対戦するかもしれない。